モルタル壁の塗り替え|補修方法と費用相場を解説
「モルタル壁の劣化が気になるけれども、どのタイミングで塗り替えればいいのだろう」と悩んでいませんか?
モルタル壁の劣化を放置していると、雨漏りにつながり構造が劣化するなど深刻なダメージを受けかねません。
この記事では、そもそもモルタル壁とはどのような壁なのか、 メリット・デメリットを解説し、メンテナンスのサインや気になる費用をご紹介します。
目次
1.モルタル壁とは
そもそも「モルタル壁」とはどのような種類の壁なのでしょうか?
モルタル壁の構造
モルタル壁の「モルタル」とは、セメントを主原料とし、砂と水を混ぜて練り、ペースト状にした建築材料です。
モルタル壁にするときには、木摺り(きずり)と呼ばれる細い板を水平に打ち付けた壁の上に防水紙を張り、その上にラスと呼ばれる金網を張った「ラス下地」に、モルタルを塗りつけて仕上げます。下地からモルタルが滑り落ちるのを、ラスが防ぐ仕組みです。
モルタルが乾燥したら、スコッタ(石灰と水でできた建材)や塗料を吹き付けたり、コテで塗ったりして仕上げます。
モルタル壁のメリット
モルタル壁の最も大きなメリットは、意匠性が高いことです。
モルタル壁は近年主流の板状の外壁材を張り付けていくサイディングとは異なり、壁に継ぎ目ができないため高級感があります。
左官職人が手作業で仕上げる場合、コテでさまざまなデザインを表現でき、世界で唯一の外壁にすることも可能です。
またモルタルは不燃材料であるセメントが主原料であるため、耐火性が高いことも特徴です。
モルタル壁のデメリット
モルタル壁のデメリットは、コストが高くなることです。
モルタル壁は左官職人が手作業で壁を作っていくため工期が長くなりがちで、そのぶん人件費もかかります。
またモルタルは乾燥すると縮むため、ひび割れしやすいこともデメリットです。
モルタル壁のメンテナンス時期
モルタル壁のメンテナンス時期は、劣化状態によって判断します。
基本的には、モルタル壁の表面に施された塗装の劣化サイクルにあわせてメンテナンスを行います。
外壁塗装に使われる塗料の耐用年数は10年程度であるため、10年サイクルで再塗装を行うのが一般的です。
ただし深刻なひび割れが見られる場合は、塗装の状態にかかわらず、早めのメンテナンスが必要です。
耐火性に優れ、広い面に継ぎ目ができないモルタル外壁は、一般住宅だけでなくビルや店舗にも多く採用されていました。
ビルや店舗は外壁面積が広いため、塗り替え補修のタイミングは一般住宅よりもより慎重に見極める必要があります。
タイミングが遅れ劣化が深刻になると、メンテナンスが必要な範囲やかける手間が増え、工事費用が高額になる恐れがあるためです。
ビル・店舗のモルタル壁の塗り替え補修は、劣化が見られる前に予防として実施するのがおすすめです。
ビル・店舗のモルタル壁補修について、くわしくは以下の記事をご覧ください。
2.モルタル壁の塗り替えサイン
モルタル壁を塗り替えるかどうかは、劣化の状況からタイミングを見極めます。
サインを見落とし放置すると、思いがけず高額な工事費用になることがあるので注意しましょう。
ここではモルタル壁の具体的な塗り替えサインを紹介します。
ひび割れ(クラック)
モルタル壁のひび割れは、典型的な塗り替えのサインです。
ひび割れには「ヘアクラック」と「構造クラック」があり、深刻度が異なります。
ヘアクラック
髪の毛程度の細いひび割れがヘアクラックです。
一般的には幅が0.3mm未満、深さ4mm未満のひび割れがヘアクラックと呼ばれます。
ヘアクラックはモルタル壁も表面の仕上げ材に発生していることが多く、建物自体に深刻なダメージは与えません。
ただし放置しているとひび割れが進行し、構造にまで影響する構造クラックになるリスクがあります。
構造クラック
構造クラックとは、幅0.3mm以上、深さ4mm以上のひび割れを指します。
ヘアクラックより深刻で、雨漏りを併発したり、構造の腐食を引き起こしたりする恐れがあるため早急に対処が必要です。
チョーキング
チョーキングとは、モルタル壁を手の平でなでるとチョークの粉のようなものがつく現象です。
この粉は塗料に含まれる樹脂が劣化し、外壁の防水性が失われていることを意味します。
雨だれ
雨だれは、壁についた汚れが雨で流れきれずに表面に残ったものです。
モルタル壁に施された塗装の状態がよく水を十分弾く間は、なかなか雨だれは発生しません。
雨だれが目立つようになったら、モルタルの仕上げ塗装の防水機能が落ちているサインです。
コケ・藻・カビ
表面にコケや藻、カビなどが発生している場合も、モルタル壁が劣化しているとわかります。
コケや藻、カビなどは湿度が高い場所を好むことから、外壁の防水性が落ち十分乾燥できていない状態である証拠であるためです。
浮き・剥がれ
モルタル壁の浮きや剥がれは、深刻な劣化状態です。
基本的にモルタル壁の浮きや剥がれは、ヘアクラックや構造クラックから雨水が入り込むことで発生します。
状態が深刻な場合は補修ではなく、既存の壁の上から新たに外壁材を重ね張りする「カバー工法」で外壁を作りなおす必要があるでしょう。
台風や地震のあとは塗り替えサインを確認! 要チェックのポイントは?
大きな台風や地震のあとは、モルタル壁に塗り替えサインが発生していないか確認しましょう。
特にチェックしたいのは、以下の箇所です。
- 窓枠の周りにひび割れが発生していないか
- 窓枠やドアなど開口部とモルタル外壁の隙間を埋めるシーリングが、剥がれたり隙間ができたりしていないか
窓枠の周りは台風や地震で大きな負荷がかかりやすく、ひび割れやシーリングの剥がれなどが発生しやすい場所です。
安全が確認できてから、新たなサインが出ていないか調べましょう。
あわせて屋根や雨樋の破損がないかも調べておくと安心です。
ただし高所作業は危険なので、業者に依頼することをおすすめします。
3.モルタル壁のメンテナンス費用相場
モルタル壁をメンテナンスするのには、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
気になる相場を紹介します。
部分補修
構造クラックの補修や、シーリングの増し打ち(既存のシーリングに重ね塗りする)・打ち替え(既存のシーリングを撤去し新しく打ちなおす)など、モルタル壁の部分的な補修にかかる費用は以下が目安です。
補修範囲によっては、別途足場代などが発生する場合があります。
内容 | 費用相場 |
ひび割れ補修 | 700円~1,400円/m |
シーリング増し打ち | 500~1,000円/m |
シーリング打ち替え | 900~1,500円/m |
ひび割れの補修は、軽度であればひび割れ部分にシーリング材を充てんするだけですみます。
重度のひび割れに対しては、シーリング材を充てんする前にひび割れた部分をV字もしくはU字にカットする手間がかかるため、やや高額になりがちです。
なおコケや藻、カビを除去目的で高圧洗浄のみ希望される方がいますが、塗り替え前以外はおすすめしません。
コケや藻を除去しても、外壁の状態がよくなるわけではなく、また高圧洗浄によって表面の塗膜をかえって傷めてしまう可能性があるためです。
コケや藻、カビなどの除去は、外壁塗装とセットで考えましょう。
外壁塗装
モルタル壁がひび割れているけれどもヘアクラックですんでいる、またひび割れはなくチョーキングやコケ・藻などが発生しているだけであれば、外壁塗装で補修できます。
外壁塗装にかかる費用は、使用する塗料のグレードなどによって異なりますが、目安は以下のとおりです。
坪数(延床面積) | 費用相場 |
20坪 | 約40万~70万円 |
30坪 | 約60万~100万円 |
40坪 | 約80万~130万円 |
50坪 | 約100万~150万円 |
60坪 | 約130万~200万円 |
70坪 | 約150万~210万円 |
100坪 | 約200万~300万円 |
2階建て、3階建てなど高所作業を伴う場合は、ほかに足場代として、700~1,000円/㎡程度必要です。
屋根のメンテナンスもあわせて行うと、足場代が一度ですむのでコストカットにつながります。
カバー工法
モルタルが全体的に劣化している場合は、補修を考えるのではなくカバー工法によるメンテナンスを検討します。
カバー工法とは、既存のモルタル壁の上に、新しく外壁を張る方法で、耐震性を考慮して軽量な金属系サイディングが選ばれるのが一般的です。
カバー工法のメリット&デメリット
カバー工法は、既存のモルタル壁を撤去する必要がないため、費用を抑えられるのがメリットです。
外壁が二重になるため断熱効果も得られます。
ただし下地となる既存外壁がしっかりしている必要があるので、モルタル壁が崩れ落ちているなど劣化が著しい場合は施工できません。
またすでに雨漏りしているような場合は、基本的にはモルタル壁の塗り替え、もしくは新しい外壁への張り替えが必要になります。
カバー工法では構造の劣化を修復できるわけではないためです。
「サイディングを上から張ればメンテナンスしなくてよくなりますよ」などの営業トークには注意してください。
外壁の状態をきちんと見極め、納得できる説明をしてくれる業者を選びましょう。
4.まとめ
モルタル壁の劣化を放置していると、補修範囲が広がり費用がかさむだけでなく、雨漏りによる構造の損傷など深刻なダメージを受ける恐れがあります。
ひび割れやチョーキングなど、モルタル壁の劣化のサインに気づいたら、早めにメンテナンスを行いましょう。
志賀塗装では、モルタル壁の補修や塗装メンテナンスを承っています。
「まずは相談だけしたい」といったご依頼も歓迎いたしますので、お気軽にお問い合わせください。